サント・スピリト大聖堂は、フィレンツェでも特に印象的な場所のひとつです。アルノ川左岸に位置し、フィリッポ・ブルネレスキによって設計されました。創建以来一貫して、聖アウグスティヌス修道会の修道士たちによって管理されています。内部にはフィレンツェを代表する芸術家たちの作品が数多く収められており、その中でも特に重要なのが、若きミケランジェロによる木彫の十字架像です。
サント・スピリト大聖堂は、イタリアの教会の中でも特に魅力的な見学ルートのひとつを提供しています。内部では、フィレンツェを代表する芸術家たちの作品を通じて、その美を追体験することができます。なかでも教会の壮麗さに大きく貢献した芸術家がミケランジェロです。彼は若き修学時代にこの大聖堂で学び、その荘厳さから着想を得て、最も重要な作品のひとつである木彫の十字架像を制作しました。アウグスティノ会が提供する体験は、精神的・文化的成長へと心と魂の扉を開きます。大聖堂の扉をくぐると、視界は驚きに満たされます。ルネサンス建築の特徴である、コリント式柱頭で装飾されたピエトラ・セレーナの円柱が、自然と構造の完璧な調和を示しています。帆状ヴォールトが生み出す細く調和の取れた遠近感と、身廊の広がりを感じさせる空間は、自由と安らぎの感覚をもたらします。ブルネレスキの建築は直線的な体験を強いるものではなく、複数の軸線と視点が観る者に選択の自由を与え、空間と一体となる体験を可能にします。独自の視覚的ルートを描ける構造は、訪れるたびに異なる体験をもたらします。

大聖堂にある主な作品

受胎告知
1498年

ネルリ祭壇画
1485–1488年

ピエタ
1549年

聖フィアクルスの奇跡
1596年

姦淫の女とキリスト
1577年

十字架像
1493年
提案された見学ルートは右側身廊から始まります。ここで来訪者は、ピエル・フランチェスコ・フォスキ、ヤーコポ・サンソヴィーノ、ジョヴァンニ・バラッタをはじめとする芸術家たちに導かれながら、知と精神性に満ちた歩みへと身を委ねます。祭壇に配された絵画、大理石装飾、精緻な浮彫の交替が、視覚的かつ象徴的なリズムを刻みながら全行程に寄り添います。
右翼廊を進むと、古典的な建築構成に基づいて配置された八つの礼拝堂が現れます。短辺ごとに二つ、右側に四つ設けられています。その中でも、ひときわ目を引くのがネルリ礼拝堂に置かれた作品です。フィリッピーノ・リッピによるネルリ祭壇画(幼子キリストを抱く聖母と聖ヨハネ、聖マルティーノ、聖カタリナ)は、サン・フレディアーノ地区の景観を描き、本聖堂内でも特に著名な作品の一つとされています。
さらに進むと、フレスコバルディ家、チーニ家、ダイネッリ・ダ・バニャーノ家に属していた、聖堂内でも最も荘厳な礼拝堂の一つに至ります。内部には、アレッサンドロ・アローリによる《姦淫の女とキリスト》(1577年)が安置され、プレデッラにはダ・バニャーノ家の肖像が描かれています。16世紀に制作された前飾りと、15世紀末に遡る上部のステンドグラスが、礼拝堂の装飾を完成させています。
左上には18世紀の小聖歌隊席が設けられており、フレスコバルディ侯爵家は隣接する私邸から、人目を避けて典礼に参加することができました。祭壇背後のカポクローチェ、すなわち内陣と後陣を含む空間の脇には、コルビネッリ礼拝堂があり、アンドレア・サンソヴィーノによる建築と彫刻の見事な融合が、洗練と技巧の極致を示しています。
三つの壁龕の間に配された燭台装飾をもつ優雅な付柱は、古代ローマの凱旋門を想起させます。中央の壁龕には小神殿形の聖櫃が置かれ、扉には浮彫で復活したキリストが表されています。左右の壁龕には聖マタイと聖ヤコブの像が立ち、その上には大天使ガブリエルと受胎告知の聖母を描いた円形画が掲げられています。
聖堂内の見学は左側身廊へと続き、ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ、タッデオ・ランディーニ、そして再びピエル・フランチェスコ・フォスキといった巨匠たちの作品が並びます。これらをもって、聖なる空間を巡るこの歩みは静かに締めくくられます。
最後に、サント・スピリトの記念建築群は、アウグスティヌス会博物館ルートという特別な空間を提供しています。入口はオルガンの下にあり、その神聖な旋律が聖堂全体に響き渡り、訪れる者を聖具室の前室へと導きながら、建築的体験から瞑想的次元への移行を静かに告げます。
サント・スピリトのアウグスティヌス会博物館見学ルート
アウグスティヌス会の見学ルートは、前室(ヴェスティボロ)から始まります。ここには、1491年にアンドレア・サンソヴィーノによって制作された見事な格天井が保存されています。入口に立つとすぐに聖具室の一部が視界に入り、その建築的な簡素さが、心と精神に深い安らぎをもたらします。
八角形の平面構成と、ピエトラ・セレーナおよび漆喰による装飾は、建築家ジュリアーノ・ダ・サンガッロの卓越した才能を如実に示しています。ルネサンス様式は空間の知覚を広げ、比較的コンパクトな空間でありながら、壁の近さによる圧迫感を感じさせません。八角形を支える付柱は視線を疲れさせることなく、コリント式風の柱頭に施された変化に富む装飾によって、歩みを進めるたびに新たな驚きを与えます。
ここには、サント・スピリト記念建築群を誇る最も重要な作品の一つが置かれています。すなわち、若きミケランジェロによる木彫の十字架像です。殉教と死の悲劇を前にしたキリストの姿は、か弱く無防備にも見えますが、聖具室内という配置によって、まるで建築そのものの一部であるかのような荘厳さと輝きを放っています。その中心的な位置は、この空間全体の軸としての役割を果たし、苦悶に押しつぶされながらも、あらゆる束縛から解き放たれ、半ば宙に浮かぶかのように現れるキリストの姿は、信仰を寄せる者と静かに対話しようとしているかのようです。
見学ルートの終点は、死者の回廊(キオストロ・デイ・モルティ)です。この名は、壁一面を覆う数多くの墓碑に由来します。正方形の平面をもつこの回廊は、各辺に七つの半円アーチを備え、頑丈な角柱によって支えられています。柱は上階へと延びて付柱となり、連続する窓を縁取っています。それぞれのアーチには、18世紀にさまざまな芸術家によって装飾されたルネットが配されています。
しかし、この場所の美しさは、目に映るものだけにとどまりません。やがて視覚はより深い感覚へと譲り渡され、内面的な「盲目」とも言える状態の中で、孤独を溶かす見えない関係性が立ち現れてきます。ここでは視覚だけでは不十分であり、身体と魂が身を委ねることで、時間を超越した空間の存在を実感することが求められます。この場所において、魂は日常の束縛から解き放たれ、静寂と平安のひとときを見出すのです。
サント・スピリトにおける「聖霊」の称号
なぜフィレンツェのアウグスティノ会聖堂は聖霊に捧げられているのでしょうか。ジョヴァンニ・チプリアーニ教授が執筆した本稿では、この奉献名の歴史的な由来を解説します。
非営利団体 アミーチ・ディ・サント・スピリト の支援により、大聖堂への入場は無料です。なお、博物館見学ルートへの入場には、お一人様2ユーロの協力金が必要となります。


